花言葉は現代においても、人の伝えにくい思いや気持ちを伝えることのできるロマンティックな方法の1つです。
使いたければ、SNSや本でいくらでも検索できますが、検索すると1つの花に付いている言葉が1つではなく、いくつかついていることに驚かされます。
どうして花言葉は何種類もの言葉がついているのでしょうか?そもそも何が由来で現代まで受け継がれてきたのでしょうか?今回はそんな花言葉の基本となる疑問にお答えします。

西洋から始まった花言葉

花言葉の由来はヨーロッパと思いがちですが、意外にも17世紀のアラビア地方のオスマン帝国、現在のトルコから始まったという説が有力です。

17世紀頃のオスマン帝国の首都コンスタンティノープル、現在でいうトルコのイスタンブールでは、花には神からのメッセージが込められていると考えられており、花それぞれにふさわしい言葉が与えられていました。その言葉こそが“花言葉”です。

そして、当時は文字や言葉ではなく、花に宿るメッセージに自分の思いを託して恋人に贈り、受け取った相手もまた同じように花を贈って返事をするという「selam(セラム)」という習慣がありました。

花を贈り、その花ごとの意味を使って相手とやり取りをすると同時に、花同士を組み合わせることで「花の手紙」を作っていたそうです。素敵ですよね。

この「selam(セラム)」を今から300年ほど前の18世紀に入り、イギリスのトルコ駐在大使夫人だったメアリー・ウォートリー・モンタギューが伝えることとなります。

イギリスの詩人であり、手紙文学の女流作家であった、メアリー・ウォートリー・モンタギューは駐在大使夫人としてトルコに数年滞在していました。

そして、滞在中にイギリスの友人らにトルコの風習などを紹介する手紙を沢山送りました。
このやり取りの手紙がモンタギューの没後1763年に、イギリスで「トルコ書簡集」として本となり出版されました。

そして、もう一人オーブリー・ド・ラ・モトレイも花言葉が広がるきっかけを作った人物です。

スウェーデン王カール12世の部下であった、オーブリー・ド・ラ・モトレイは1709年、ロシアとの戦いに敗れて国王と共にトルコへ亡命しました。
5年間のトルコでの生活の中で、トルコの花言葉や風習を学び後にヨーロッパへ持ち帰り伝えたのです。

しかし、ヨーロッパへ伝わった花言葉ですが、当時のヨーロッパではさほどの広がりを見せませんでした。

花言葉がブームとなるのは、それから約100年後のフランスでの出来事がきっかけです。

ヨーロッパの国々の中で何故フランスで人気となったのでしょうか?
それは、フランスにそもそも花言葉が根付く基盤があったからです。

フランスでは、上流階級の間で好意を寄せる人への思いを伝えたり、誰かを褒め称えたり、反対に他人への悪口、批判などを花や植物に例えて詩にし、詩を書き綴ったノートを回し読みすることが流行っていました。

そんな、文化も拍車をかけることになり、1818年にシャルロット・ド・ラトゥールが書いた『花の言葉』が出版されると、たちまちフランスでも大ブームとなったのです。

出版されたこの本は、フランスで18版も重ねるほどのベストセラーとなりました。
アメリカやスペインでは海賊版が出回ったり、類似本も数多く出版されるほど大流行しました。

日本の花言葉の由来

ヨーロッパでの流行により、広がった花言葉は明治時代になると日本でも知られるようになりました。

1886年にルーイズ・タルクの書いた本を上田金城が訳した『泰西礼法』という本が出版されます。

この本は泰西、つまり西洋のマナーを記した本で、その中の章の1つ「十数種類の花言葉」で花言葉が紹介されました。
この本が日本で最初に花言葉を紹介した書籍だと言われています。

その後、1910年日本初の花言葉のみを記した本『花』が発売されます。
この本は詩人で文芸雑誌「スバル」の編集者であった江南文三が解説をし、歌人として有名な与謝野晶子が花を題材にした和歌を50首も掲載しています。

当初は輸入された花言葉をそのまま使っていましたが、やがて日本人の風習や歴史に合わせて日本独自の花言葉が作られました。

とはいえ、日本人にとって花は昔から身近で人々の生活に沿ったものでした。

現存する日本最古の歌集である万葉集にも植物を詠んだ歌が約1500首もあるそうです。
現代よりもずっと自然との関わりが深かったことが伺えます。

和歌を交わす風習が根付いた平安時代には自分の伝えたい思いに合った時節の植物を文に添えて送りました。

和歌に合った植物を選ぶセンスや、逆に植物に合わせた和歌を詠む技量が大切だったようです。
このような、和歌や贈り物に添えて植物を添えることを「折り枝」と呼びます。
『源氏物語』にも様々な折り柄が登場します。

例えば「山吹(やまぶき)」、「女郎花(おみなえし)」は梔子(くちなし)の実で染めた黄色い色に花の色が似ていることから、くちなし=口なし、つまり口にすることのできない恋をイメージさせたようです。

花言葉が伝わる前から、花によって伝えにくい気持ちを伝えていたのがよく分かりますよね。
花言葉が日本で長きにわたり愛されていることも納得です。

1つの花に1つではない花言葉

花言葉は1つの花に1つの言葉ではなく、いくつかの花言葉が存在します。

先程書いたように、花言葉はヨーロッパのブームから広がりました。
そのため、ギリシャ神話やキリスト教に由来する花言葉が多いのです。
つまり、花言葉はヨーロッパの人たちにピッタリのものになっているのです。

それから時を経て、ヨーロッパから広がった花言葉は世界各地に伝わると、国ごとの文化や歴史、花の特性に合った花言葉がどんどん追加されていきます。

花言葉が1つの花に1つではないのは、色々な国で花言葉が独自に広がり追加が繰り返されてきたからです。

それだけ花言葉は、沢山の国々の人々に愛され広がりを見せてきたのです。

現代の花言葉

花は1年の間に沢山の新しい品種が生み出されます。
では、新しい花の花言葉はどのように決められるのでしょうか?

日本の新種の花言葉

実は、花卉業界の団体がつけているのです。
昔から日本では、園芸産業の広がりと共に花卉類の販売促進の為などに花言葉が活用されてきました。そのため、日本独自の新品種が開発された際には開発者が花言葉を命名したり、消費者から花言葉を募集するなどされています。興味を引く花言葉は販売に影響を及ぼすのかもしれません。

例えば、少し前に話題になった青いバラをご存知ですか?

そもそもバラには青い色素がないので、鮮やかな青いバラは存在しませんでした。
存在しないバラということから「不可能」という花言葉がつけられましたが、
2004年にサントリーが遺伝子操作により青い色素を持ったバラの開発に
世界で初めて成功しました。

青い色素を持っているとはいえ、青色よりも青紫色ですが、花卉業界では大変話題になりました。「アプローズ」と名付けられた花には、もちろん新しい花言葉が追加されました。

その花言葉が“夢叶う”です。

花言葉は、決め方に決まりなどないのです。なんとも自由に簡単に花言葉が追加されることが分かりますよね。

ちなみに、海外から輸入される花の花言葉は、もともとの悪い意味の花言葉がついていれば、悪い意味を省いてしまうこともあるそうです。日本人に受け入れやすいように良い意味にかえて紹介してしまうのです。

海外の方に花を贈る場合には注意した方が良さそうです。

おわりに

花言葉はそれぞれの国や歴史、風習や神話、伝説などから生まれたものです。

もちろん日本にも昔話に沿った日本ならではの花言葉が付いている花もあり、
日本独自の花言葉も沢山存在します。

花言葉は色々な国の住む人々の暮らしに密着し、色々な国で親しまれてきたからこそ
同じ花でも違う意味を持った花言葉がつくこともあるのです。

“ややこしい”と思いますが、それぞれの国の文化や歴史に思いをはせながら花言葉を眺めるのもいいでしょう。
海外の方に花言葉を贈る場合には、その国の出している花言葉の本や情報を見つけるのも面白いですよね。

これからも発展を続けるであろう花言葉に、これからも注目し続けてください!