花言葉と言えば「愛の告白」ともいえるほど愛のイメージは強く、実際に愛の表現が入った花言葉はとても多いです。しかし、愛と言っても種類は様々。恋人に対する愛、友人に向けた愛、家族を愛する気持ち。今回はそんな色々な“愛のカタチ”が表現された花言葉にエピソードを添えてご紹介します。

バラ(赤)の花言葉/「愛情」、「美」、「あなたを愛しています」、「情熱」

花言葉に詳しくない人でも、赤いバラの花言葉ならイメージが沸く方も多いのではない
でしょうか?それほど赤いバラは愛を伝える代名詞のような花です。

バラは、色はさることながら、本数や棘の数などによっても異なった対応の花言葉が存在します。それだけ花言葉にとても縁の深い花です。

花言葉の起源となったエピソードもやはり、花言葉とは縁が深いギリシャ神話からだとされています。

ギリシャ神話において、愛と美を司るアフロディーテは神々の中でも最高の美を持つ女神
とされています。

イタリアの画家ボッティチェリの貝に乗った女神像『ヴィーナスの誕生』はアフロディーテを描いたものです。あの絵を思い浮かべるとイメージしやすいですよね。

海の泡から生まれたアフロディーテのあまりの美しさに、大地が「自分も神々と同じように美しいものを創造できる」といって生み出したのがバラの花だとされています。

しかし、そこで登場するのは白いバラ。
赤いバラの花言葉のエピソードはその後の話に繋がります。

美しいアフロディーテは恋多き女神となりました。愛人であった武神マルスがいるにもかかわらず、美少年アドニスに恋をしてしまいます。
マルスはアフロディーテを自分のものにしようと、アドニスを地上に叩きつけます。
アドニスを助けようと駆け寄ったアフロディーテは白いバラの茂みで倒れ、
棘で傷を負います。
傷から流れ出たアフロディーテの鮮血が白いバラを赤く染めたといいます。

また、また、マルスの放った猪にアドニスが殺された時、彼の死を悲しんだアフロディーテの涙が赤いバラに変わったという話もあります。

いずれにしても、アフロディーテは愛と美の女神であり、
愛と美を象徴するアフロディーテが生み出したのが赤いバラなので、
赤いバラの花言葉には分かりやすい愛の言葉が連なっているというわけです。

水仙(すいせん)の花言葉/「自己愛」、「うぬぼれ」

原種は秋に咲く種類もあるそうですが、日本では春を告げる花としてよく見かける水仙。
ヒガンバナ科の球根植物で、甘い香りがとても良く、香料として香水にも使われるほどです。

葉はニラに似ていますが、毒性があり、庭先で見つけた水仙をニラと誤って食して中毒症状を起こしてしまったなどというニュースを聞いた方もいるかもしれません。

そんな水仙についている花言葉は「自己愛」。
ギリシャ神話が元になっています。

若く美しい美少年ナルキッソスは、多くの相手から言い寄られても冷たい態度をし続けました。
その美しさに魅了された森の妖精エコーも皆と同じようにナルキッソスに恋をしましたが、
相手にはされませんでした。

エコーは悲しみのあまり姿を失い、声だけの存在になってしまいます。

そのことを知った女神ネメシスは怒り、ナルキッソスに呪いをかけます。
女神ネメシスの呪いによってナルキッソスは水面に映る自分の姿に恋をしてしまいます。

そしてそのまま水面に映る自分から離れられなくなり、やせ細って死んでしまいます。
後にナルキッソスは水辺でうつむきがちに咲くスイセンに変わったという神話です。

お気づきの方もいるかもしれませんね。
自分に酔ったナルキッソスは「ナルシスト」の語源になり、
やまびこやこだまの語源になったのが「エコー」です。

スイセン属の学名「Narcissus」もナルキッソスが語源になっています。
漢字名の「水仙」は水辺で咲く姿を仙人に例えたものとされています。

水辺でうつむき加減に咲いているスイセンを見かけたら
エピソードと共に思い出して頂きたい花言葉です。

時計草(トケイソウ)の花言葉/「聖なる愛」、「信仰」、「宗教的情熱」

トケイソウという花をご存知ですか?その名の通り、時計に見える面白い花です。おしべは
3つに分裂していて、時計の長針、短針、秒針に見えることからその名が付きました。

英名では「パッション・フラワー」と呼ばれます。
パッションフルーツはトケイソウと同属の果物トケイソウの果実です。

明るい南国のフルーツのイメージからパッションとは「情熱」の意味で捉えがちですが、
このパッションはキリストの「受難」を意味します。

つるはキリストを縛り上げたロープ、花びらとガクを合わせた10枚は、キリストの弟子のうち裏切り者のユダとペテロを除いた10人を、花の子房柱は十字架、おしべは釘、副冠はいばらの冠、巻きひげはムチ、葉は槍であるとされ、宗教色の強い花とされてきました。

16世紀、トケイソウの原産地である中南米に派遣されたイエズス会の宣教師は、
トケイソウをかつて聖フランチェスコが夢に見たという「十字架の花」と信じ、
キリスト教の布教に利用しました。

チューリップの花言葉/「博愛」、「思いやり」

バラと同じように色によって様々な花言葉を持つチューリップ。
特にチューリップの花言葉は愛にまつわる花言葉がとても多いです。

そんなチューリップと言えばオランダですよね。
オランダのチューリップは世界一のシェア。オランダの国花にもなっています。

花言葉もオランダに伝わる伝説が元になっています。

美しい少女に3人の騎士がプロポーズをし、それぞれ求婚の証として貢物を贈ります。
貢物は名声を表す王冠、強さを表す剣、財産を表す黄金とどれも魅力的でしたが、
心優しい少女は選ばれない2人を思いやり選ぶことが出来ませんでした。

悩んだ少女は、花の女神フローラに頼み、自らをチューリップの姿に変えてもらいました。
残された3人の騎士たちは仲良くチューリップを育てたというお話です。

少女が全ての人々を平等に愛そうとした気持ちが「博愛」の花言葉を生み出しました。
ちなみに、3人の騎士が贈った貢物は今では、王冠=花、剣=葉、黄金=球根だという言葉も残っています。

また、ギリシャ神話にもチューリップにまつわる話が残されています。
秋の神ヴェルツゥヌは美しい娘チューリップにひと目ぼれをしました。

ヴェルツゥヌはアプローチを繰り返しますがチューリップは断り続けます。
それでもヴェルツゥヌは諦めずにチューリップにアプローチをします。
困ったチューリップは貞操の神アルテミスに「私を助けてください」と助けを求めます。

アルテミスは願いを聞き入れチューリップを美しい春の花に変えたというお話です。

花言葉を考えるとオランダのお話の方が合っているように思えますよね。

タンポポの花言葉/「愛の神託」、「真実の愛」、「別離」

春の訪れを感じる野草として1番に思いつくのがタンポポですよね。

江戸時代には鼓草(ツヅミクサ)と呼ばれていました。
日本の伝統楽器である鼓は叩く音が「タン」「ポポ」と聞こえるため、その擬音語が語源となってタンポポと呼ばれるようになったとも言われています。

英語での呼び名は「Dandelion(ダンディライオン)」。
これはタンポポのギザギザした葉がライオンの牙に似ていることから、フランス語の「ライオンの歯」が語源と言われています。

そんな身近な植物タンポポの花言葉は「愛の神託」です。
花言葉の由来はタンポポを恋占いに使うことからとされています。

花占いと言えば、花弁を1枚ずつ千切りながら「好き、嫌い、好き、、、」と唱えるように思いますが、ヨーロッパでは、「好き、嫌い、好き、、、」と唱えながら綿毛を吹きます。
最後の綿毛が「好き」「嫌い」のどちらになるかで占う恋占いです。

また、綿毛がふわふわと遠くへ飛んでしまうことから「別離」という花言葉も生まれたとされています。

ちなみに、ひと息で全ての綿毛を飛ばすことが出来れば「情熱的に愛されている」、少し残ってしまうと「心離れの気配がある」、沢山綿毛が残れば「相手はあなたに無関心」という恋占いもあるそうです。今度タンポポの綿毛に出会ったら是非お試しください。

おわりに

好きな人に愛の言葉を伝える方法として花言葉を使うこともあるでしょう。

しかし、愛のカタチが様々であるように、花言葉も色々な愛のカタチに対応しています。

あなたの使いたいシーンに合わせた花言葉を、
花と共に贈れば、普段素直に言えない言葉も添えることが出来るでしょう。

沢山ある花言葉の中の一部ですが、エピソードと共に知ることで花言葉を覚えるきっかけになれれば素敵ですよね。