“臭い花”といっても実際どれくらい臭いのでしょうか?臭いニオイは誰もが嗅ぎたくないニオイですが、どれくらい臭いのかは正直気になるところですよね。怖いもの見たさのようなワクワクした感じ。しかし、なんで臭いのでしょうか?そこには子孫繁栄の為に頑張って臭くなった花の努力が隠れています。今回ご紹介する“臭い花”。驚くことに花言葉もついています。エピソードと共にご紹介するので、あなたが嗅いでみたい“臭い花”を見つけてください!
世界最大の花【ラフレシア】
東南アジアとマレー半島に分布するラフレシア。
葉緑素を持たず、光合成をしないため栄養補給を完全に寄生に頼って生きる
全寄生植物です。
ブドウ科の植物の根に寄生し、茎や根、葉はあません。
本体の寄主組織内に食い込みごく微細な糸状の細胞列からなるもので、
ここから直接花を出します。
花の直径は90㎝にも達し、「世界最大の花」です。
花は雄花と雌花に分かれていて、雄花の葯(ヤク)からは粘液に包まれたクリーム状の
花粉が出てきます。
その花粉が花の奥に入り込んだハエの背面に付着。
それから、死肉や獣の糞などで繁殖するクロバエ科オビキンバエ属のハエが
雌花の強烈な匂いに誘われて花の奥に入り込み、雄しべの柱頭に背中が触れて
受粉が成立します。
腐った肉や汲み取り便所のニオイに例えられる強烈な匂いは、
開花し始めて1~2時間で「果物が腐った臭い」を出し、
4時間経つと「肉が腐った臭い」になり、
8時間経つと「魚が腐った臭い」になるとも言われています。
いずれにしても臭いを発するのは開花しているうちのごく短期間とのこと。
見た目は多肉質の大形の花で、赤い花びらに白い斑点が点在。
発泡スチロールのようなキャベツのような質感で弾力があります。
踏むと乾いたパキパキと音を立てるようです。
どれくらい臭い花なのか見て見たいものですがラフレシアは幻の花とされています。
その理由は、寄生する植物が限られていて、種からブドウ科の植物に寄生するまでの過程は未だに謎に包まれており、栽培が難しいこと。
また、蕾の期間が1年以上と長く、開花時期の予想はかなり困難だということ。
さらに、花を咲かすのに2年の歳月がかかることに対し、花は3日間しか咲かず、
咲く季節も決まっていないので正に幻の花なのです。
ラフレシアの名前の由来
1826年当時、現地ではまだラフレシアは「人食い花ではないか?」と恐れられていました。
しかし、シンガポールの創始者で植物学にも興味があったイギリス人のトーマス・ラッフルズの調査隊が自ら花に触って無害であることを証明しました。
その後、調査隊に同行した博物学者のジョセフ・アーノルドはラフレシアをスケッチし、観察。標本などを作り世界に発表しました。
ラフレシアの名前はこの2人にちなんで、「ラフレシア・アルノルディティ」と名付けられました。
ラフレシアは他にも、赤い肉厚の花弁が血や肉を創造させるためか、
「植物のドラキュラ」、「吸血花」という別名があります。
世界最大対決
「世界最大の花」とされるラフレシアですが、実はギネスブックに記載されている記録では
別の花が記載されています。その花は「ショクダイオオコンニャク」。
花の形が燭台に似ていることからショクダイオオコンニャク(別名スマトラオオコンニャク)
と呼ばれる花で、あの食用のコンニャクと同じ種類です。
大きさは、直径1.5m、縦寸3.5mと本当に巨大な花です。
しかも、このショクダイオオコンニャクは臭いでも負けていません。
負けず劣らずの非常に強い腐敗臭を放つため「死体花」や「お化けコンニャク」とも
呼ばれています。
しかし、ショクダイコンニャクの花は「複数の小さな花が密集した花序と仏炎苞」なので、
単体の花の大きさとしてはラフレシアが世界最大となるのです。
臭くて大きい花対決。
実際のニオイはどちらが臭いのかも知りたいですよね。
ラフレシアの花言葉
見た目が強烈な印象を持つラフレシアですが、きちんと花言葉がついています。
ラフレシアの花言葉は「夢うつつ」です。
確かにラフレシアは夢の国に出てきそうな、現実離れした見た目。
不思議の国のアリスにも出てきそうです。
また、「夢うつつ」の花言葉には、
現実離れした見た目に加え、ラフレシアが「幻の花」であることにもこの花言葉は
由来しているようです。
ラフレシアは大きすぎるため、花束にも出来ませんし
なんせ幻の花なのでお相手と一緒に見に行くことも難しいでしょう。
この花言葉
いったいどういったシーンで使ったらいいのか悩むところです。
仏が座禅を組む姿【ザゼンソウ】
北アメリカ東部から日本を含む北東アジアと広く分布しているザゼンソウ。
サトイモ科の多年草です。
地下に太い根茎があって、草全体が非常にクサイ悪臭を漂わせます。
葉は根生し、長柄があって、葉身は円心形。
大きくなると成熟時には直径40㎝にもなり、花序は楕円形で肉穂花序をなして長さ2㎝。
舟の形をした厚い仏炎苞に包まれています。
見た目はミズバショウに似ていますが、仏炎苞は茶褐色か暗紫色。
冷帯や温帯山岳地の湿地に生育して、開花時期は1月下旬から3月中旬ごろ。
日本で見られるものはザゼンソウ・ヒメザゼンソウ・ナベクラザゼンソウの3種類が
あるようです。
ザゼンソウの名前の由来
仏像の光背に似た形の仏炎苞とその中の肉穂花序が、お坊さんが座禅を組む姿に重ね合わせ、ザゼンソウとされています。また、達磨大師の座禅する姿に見立てたことで、
別名「ダルマソウ」とも呼ばれています。
ちなみに、アメリカでは19世紀ごろザゼンソウは「ドラコンティウム」として、呼吸器系疾患、神経症、リューマチ、浮腫の治療に用いられていました。また、北米先住民族の間ではザゼンソウを薬草や調味料、魔術的なお守りとして用いたいたようです。
国は違いますが、何か宗教的な不思議な力があるのかもしれませんね。
他にはない凄い特徴を持つ花
知っている方の方が珍しいぐらいの認知度であるザゼンソウですが、
ザゼンソウには他の花にはない凄い特徴があります。
実はザゼンソウ「発熱」するのです。
ザゼンソウの花は花弁のように見える苞に包まれている中身の部分です。
中心部にあって、ブツブツがついていて、クリーム色で楕円形。
このブツブツ1つ1つが花になっているのです。
このような花を肉穂花序(にくすいかじょ)と言います。
ザゼンソウが発熱するのは、この肉穂花序の部分です。
ザゼンソウはいつも発熱しているわけではありません。
発熱するのは特別な期間だけです。
この花も植物には多い、雄しべと雌しべの両方の性を持つ両性花です。
しかし、同時期に成熟するのではなく、時間差で成熟する、雄雌異熟の花です。
先に雌しべが成熟し、その後雄しべが成熟します。
発熱は雌しべの成熟期から始まり、雄しべの成熟期に終わります。
雌しべの成熟期には肉穂花序は外気温に関係なく、常に20℃程度に保たれ、約25℃に上昇します。
例え外気温が、マイナス5℃でも、マイナス20℃でも20℃を保つのですから、凄いですよね。
肉穂花序には温度センサーのようなものがついていて、その精度は±0.9℃ととても高精度。
他にもハスやヒトデカズラも発熱はしますが、氷点下に近いような低温で発熱するのはザゼンソウだけです。
最近の研究で、発熱や温度制御のメカニズムが徐々に解明されてきました。
ザゼンソウの肉穂花序には動植物の細胞にある、ミトコンドリアが豊富に含まれています。
気温が低くなるとザゼンソウは、根に蓄えたデンプンと酸素をミトコンドリアで結合させることを活発化させることにより、発熱させるそうです。
ではなぜ、発熱するのでしょうか?
ザゼンソウは寒い地方にも生育しています。そのため、周囲の氷雪を溶かし、いち早く顔を出すことでこの時期には少ない昆虫を独占できます。
さらに少ない虫をおびき寄せるために、発熱時には生臭く、肉の腐ったような悪臭を発するのです。
その臭いは強烈なようで、ザゼンソウが生育している北米大陸では、“スカンク・キャベツ”との英名が付いています。
スカンクに例えられるなんて、どのくらい臭いのでしょうか?
気になりますよね。
ザゼンソウの花言葉
ザゼンソウの花言葉は「沈黙の愛」、「ひっそりと待つ」です。
「沈黙の愛」には、寒い中で、じっとタイミングを待って発熱する姿が胸に秘めた熱い思いを表すからでしょうか?
「ひっそりと待つ」には、他の花の咲かない時期に雪を溶かしてじっと虫を待つ姿が思い浮かばれます。
ヒトデでもサボテンでもない花【スタペリア】
南アフリカ、タンザニア、ケニア、インド東部に約90種類が分布するスタペリア。
茎は四角い棒状で葉は退化してしまい目立たないため、一見サボテンの仲間のようですが、サボテン科ではなく、ガガイモ科の多年草で多肉植物に分類されます。
葉の代わりに茎で光合成をします。
草丈は15㎝~20㎝。
花はヒトデのように見える星形で、大きさは5㎝~30㎝と種類によってだいぶ異なります。
花の色は暗紫色、紫褐色、黄色など。斑点や横筋の入るものやびっしりと毛の生えるものなど個性も豊かです。
一部の種類は生ものが腐った腐敗臭を放ち、ハエなどの虫をおびき寄せます。
花に来たハエが花の中で動き回り花粉を運んだり、卵を産み付け、卵から孵ったウジが動き回り、受粉の手助けをするという虫媒介の植物です。
品種や仲間には以下の植物が挙げられます。
【犀角(さいかく)】
南アフリカ・ケープ地方原産で15㎝前後の暗紫色の花が咲きます。花にはびっしりと毛が生えていて、開花が進むと大きく反り返ります。臭いニオイに誘われてハエがきます。
【鐘楼角(しょうろうかく)】
南アフリカ原産。花は10㎝ほどで釣り鐘のような形。色は暗赤紫色。
【牛角(ぎゅうかく)】
南アフリカ原産で、花は5㎝前後と小型。花色は黄色っぽい時に暗紫色の斑点が入っている。
【王犀角(おうさいかく)】
南アフリカ、ジンバブエ、ザンビア原産。花はスタペリアの中でも最も大きい30㎝ほど。
黄色い花に暗紫色の細い横紋がびっしりとはいった模様が特徴。
どれも“角”がつくのは、退化した葉が稜に歯状の突起を作るのでそこからきているか、四角い柱状の茎が群生するので、その茎を角と重ねたからでしょうか。
それにしても、サボテンと本当に似ているのでサボテンと思い購入して、花が咲くとその見た目のグロテスクさとニオイに驚く方もいるようです。
謎の物体の正体かも?
“ケセランパセラン”をご存知ですか?
“ケセランパセラン”とは江戸時代以降に出てきた謎の生物とされる物体の事です。
1970年以降に大ブームとなりました。
外見はタンポポの綿毛やウサギの尻尾のようなフワフワして白い毛玉です。
西洋でもゴッサマーやエンゼル・ヘアと呼ばれているものがあり、同類のものではないかと言われています。
白い毛玉のような物体は空中をフワフワ飛んでいて、その1つ1つに妖力があると言われて、未確認動物として扱われることもありました。
穴の開いた桐の箱の中で、おしろいを与えることで飼育出来て、増殖する、持ち主に幸せを呼ぶなどとも言われていました。
しかも、
・穴がないと死んでしまう。
・おしろいは香料や着色料が含まれていないものが望ましい。
・1年に2回以上見るとその効果は消えてしまう。
このように言い伝えもさまざま。
また、ケセランパセランを持っていることをあまり人に知らせないほうがいいと言われていたため、先祖代々密かにケセランパセランを伝えている家もあるらしいのです。
その正体は明らかではありませんが、いくつかの説の中でスタペリアの属する、ガガイモ科の種子ではないかとも言われています。
確かに、ガガイモ科の種子は綿毛でフワフワです。
綿毛のついている種子がガガイモの実の中に詰まっていて、時期が来ると実がはじけて種子が出てきます。
種子は軽く大きな綿毛が付いているので、ほんの少しの風でも飛んでいきます。
ケセランパセランの正体はスタペリアなのでしょうか?
しかしながら、スタペリアはアフリカなどに分布する為日本に生息する6種類のガガイモとは異なります。
残念ながら同じガガイモ科であっても、日本でブームになった“ケセランパセラン”とスタペリアは関係なさそうです。別の日本に生息するガガイモ科の植物の仕業でしょう。
ガガイモ科の植物は種類が多く、多肉植物ではないものも含め約250属2700種もあります。
そのため、色々な種類をひとくくりにされて「ビザールプランツ」という名前で売られていることもあります。
「ビザール」はフランス語で、「奇妙な」、「風変わりな」という意味です。
スタペリアのようにガガイモ科の中で多肉植物に分類されるものは少なく、中でもフェルニア属とスタペリア属は奇妙な姿と奇妙な花なので人気があるようです。
もちろんスタペリアも綿毛のような種子は出来るようですが、通常は植え替えの時に株分けをしたり、挿し木で増やしたりすることで増やします。
ハエにとっては酷い花
スタペリアがハエをおびき寄せるのはニオイだけではありません。
実はその見た目もハエを惹きつけるのです。
スタペリアは赤系の色をしていますが、どれも暗い赤色ばかりです。
これは、赤黒い獣の肉の塊に擬態しているからだそうです。
花弁のように見える肉質の花冠にある突起は、牛などの動物の胃にそっくり。
色だけではなく、肉に散らばる脂質を表現した斑点。
上面には毛をつけて獣感をアピール。
見た目も死肉で、ニオイも腐敗臭だったら、ハエもすっかり騙されちゃいますよね。
しかし、スタペリアは決してハエに優しい花とは言えません。
騙されたハエは花の中を動き回り花粉の運び屋となってくれます。
さらに、いい環境だと勘違いをして無数の卵やウジ虫を産み付けますがスタペリアの花は翌日には枯れてしまうのです。
そもそも、死肉ではないのでハエのエサになるようなものはスタペリアは持っていません。
自らはハエによって受粉をしてもらえますがハエにとってはちょっといい匂いが嗅げたくらいで子孫は繁栄しませんし、あまり優しい花とは言えないのです。
スタペリアの花言葉
スタペリアの花言葉は「存在感」です。
確かに、見た目も死肉でニオイも腐敗臭を出すスタペリアの存在感は凄いかもしれません。
ご自宅で育てている方もいらっしゃるようです。
あのニオイを体感するのであれば育ててみるのもいいかもしれませんね。
種類によっては臭いがしないものがあるので注意してください。
小さい品種のスタペリアは比較的可愛かったですし、多肉植物なので栽培もさほど難しそうではないのでご興味がある方は是非栽培してみるのはいかがでしょうか?
おわりに
今回は臭いニオイを放つ花をご紹介しました。
なぜか、どの花もグロテスクで個性的です。
しかし、全ては子孫を残すために進化したもの。
個性的な見た目も虫をおびき寄せて子孫を残すための手段。
異臭を放つのも虫をおびき寄せて子孫を残すための手段です。
そもそも、臭いニオイもハエなどの一部の虫にとっては大好きな香りです。
人間が勝手にくさい、くさいと言うのもかわいそうな気もします。
しかし、こんな臭い花たちにもちゃんと花言葉があるのは不思議です。
贈り物にも出来ないですし、どんな場面で使えばいいのでしょうか?
栽培出来る花、日本に分布している花もありました。
“臭い花の”ニオイを一度嗅いでみたい方はニオイを体感することも可能です!