花はどの花もそれぞれ美しく、花ごとに違った意味の花言葉もまた素敵なものばかり。そのように思っている方は多いでしょう。しかし、いいイメージとして受け止められない、怖い花言葉も存在します。神話や言い伝え、花の見た目や印象で名づけられる花言葉。では、どんな花がどのような怖い意味の花言葉を持つのでしょうか?花言葉にまつわるエピソードとともにご紹介します。

ダリアの花言葉/「裏切り」、「気まぐれ」、「移り気」、「不安定」

メキシコでは国の花として愛されているキク科の花ダリア。
「皇帝ダリア」や「ツリーダリア」は大きいものだと2、3メートルの高さまで育ち、
人の手ほどの大きく見事な花を咲かせます。

1842年に日本に持ち込まれると、見事な花が牡丹に例えられ、
遠くの国から来たことを意味する天竺と合わさり「天竺牡丹」と命名されました。

球根を食すると毒があると定説されていましたが、現在では偽りだったとされています。
(ただし慣れないと腹痛の可能性あり)
「怖い」花言葉はその定説が元になっているからなのか?と思いたくなりますが、
エピソードは別にあります。

ナポレオン1世の皇后であるジョセフィーヌ・ド・ボアルネはダリアがとても好きでした。
ジョセフィーヌはダリアを好むあまり、自分専用の花としてダリアを独占的に育てていました。

ところが、ジョセフィーヌの侍女たちはこっそり球根を盗み出し、自分の庭で勝手にダリアを育てていたのです。

そのことを知ったジョセフィーヌは侍女たちに裏切られたと思い、ダリアを育てなくなりました。
そんな、ジョセフィーヌの思いが「裏切り」などの怖い花言葉の起源とされています。

ジョセフィーヌが「大好きな花だからみんなで育てて街にこの花を増やしましょう!」
という考え方だったら違う花言葉になっていたかもしれませんね。

クローバーの花言葉/「復讐」、「幸福」、「私を思って」、「幸運」、「約束」

子供の頃に四葉のクローバーを探した方も多いのではないでしょうか?
四葉のクローバーは珍しく、見つければ大切に本などに挟んで幸運のお守りとして保管する方もいますよね。
そんな幸せの象徴のようなクローバーにも怖い花言葉が隠れています。

クローバーはマメ科のシャジクソウ属の総称で、西洋ではシロツメクサとアカツメクサの
2種類の品種を指すことが一般的です。

イギリス北部のアイルランドでは三つ葉の植物を「シャムロック」と呼び、古くから縁起の良いものとして神聖化されてきました。

西暦432年にアイルランドを訪れた司教聖パトリックが「三位一体の教義」として、
三つ葉を使いながら布教したところ、改宗の抵抗が治まって、布教も根付いたことから、
三つ葉のクローバーは聖パトリックのシンボルとなり、後世ではアイルランドの花となりました。

そんな、幸せのシンボルクローバーになぜ、怖い花言葉がついているのでしょうか?

日本では、クローバーが持つ他の花言葉を関連させてイメージし、
“「私を思って」と「約束」したのに、裏切られた思いが「復讐」となってかえってくるから”
という説がまことしやかに囁かれています。
西洋では、四葉は“十字架=キリストが磔にされた姿”がイメージされ、宗教的な意味合いで解釈されていたようです。

また、アイヌの伝説でも起源が探れます。

とあるアイヌの部落で娘と沼の主が恋に落ちました。しかし、娘の親はその恋を許さず、
娘の許嫁の男と共謀して沼の主を毒矢で暗殺します。
すると、大量に魚が取れていた川では魚が取れなくなり、沼のほとりにはシロツメクサが咲くようになったという伝説です。
この伝説から、沼の主が娘に言ったとされる「私のものになって」と娘の「幸福」を願う気持ち、殺された恨みの思いが「復讐」という花言葉を生み出したのだとされています。

黒百合の花言葉/「呪い」、「恋」

白くてエレガントな印象の白百合に対するように扱われる黒百合ですが、
白百合はリリウム属、黒百合はフリティラリア属と正確には別の植物です。

見た目にピッタリな「呪い」という花言葉。実は見た目からだけで決まったのではありません。そこには悲しいエピソードが隠れているのです。

時は戦国時代の1536年~1588年。実際にいた武将、佐々成政(ささなりまさ)とその妻、早百合(さゆり)の物語にさかのぼります。

早百合を寵愛していた成政と早百合の間に待望の子供が出来ました。
やっとの思いで身籠った子供を2人はとても喜びましたが、
ある時、嫉妬した側室がよからぬ噂を流しました。

「早百合が身籠った子供は、浮気相手との子供で成政の子供ではない」。
そんな心無い噂を信じた成政は激怒。妻である早百合とその家族を殺害してしまいます。

身に覚えのない噂で命を奪われそうになった早百合は最期に
「立山に黒百合の花が咲いたら、佐々家は滅亡する」と言い放ち命を絶たれました。

それから、当時の最大権力のあった秀吉に取り入ろうとした成政は、秀吉の妻である『ねね』に珍しい花として黒百合を送りました。
珍しい黒百合の花を手に入れたねねは、秀吉の側室である淀の君に自慢するため見せに行きました。

しかし、事前に黒百合の花をねねが受け取ることを知っていた淀の君は沢山の黒百合を手に入れ「どこにでもある花」と言わんばかりに部屋中に黒百合を生け花にして飾っていました。

それを見たねねは「どこにでもある花を珍しい花だと言って送るなんて!」と恥をかかされたとして激怒します。

その怒りも加わり、成政は失脚。肥後で起こった一揆鎮圧が失敗した責任も取らされ切腹、命を絶ちました。
その時、立山には黒百合が咲いていた。この話が花言葉の起源となっています。

しかし、黒百合には「恋」というかわいい花言葉もついています。
これは、アイヌ民族の伝説が起源となったものです。

アイヌ民族は黒百合を好きな人の側に置き、置いた黒百合を誰が置いたのか気付かれないうちに相手が黒百合を手にすると二人は結ばれるという伝説からです。

素敵な伝説ですが、どうしても黒百合には怖いイメージの花言葉がイメージに近いかもしれません。

白く香しい甘い香りの白百合に対して、黒百合は濃い黒紫色で匂いもいい匂いとは言えません。群生している黒百合は強烈な匂いを発して、銀バエも呼び寄せるほどです。

怖い花言葉に加え、悪臭、また、下に向く花は『首が落ちる』とも言われ縁起が悪いとされています。
黒百合は贈り物には不向きな花ですが、シックな色合いが好きな方もいらっしゃるでしょう。
しかし、贈り物に不向きですから、お花屋さんではなかなか手に入らない花です。

桑(マルベリー)の花言葉/「ともに死のう」

日本では蚕のエサとして知られている桑。生薬として漢方剤として使われたり、お茶として飲まれたりと古くから生活に根付いた植物です。

また、4~5月に実る果実は甘酸っぱく美味。そのまま食べても、果実酒にされたりもしますし、木材や紙の原料にもなる万能植物です。

そんな役に立つ植物である桑ですが、とても怖い花言葉が付いています。
花言葉の起源となったのはギリシャ神話です。

美少年・ピュラモスと美少女・ティスペは、ともに深く愛し合っていました。
しかし、お互いの親は仲が悪く、2人の仲は引き裂かれそうになってしまいます。

2人は悩みましたが、駆け落ちをすることにしました。
駆け落ちの日、2人は湖畔にある白い桑の木の下で待ち合わせをしていました。

先に付いたティスペは羊小屋から出てきたライオンに気がつきます。
ライオンの口の周りには血がついています。
ティスペはライオンに気づかれないようにそっとその場を立ち去りました。
その時に、誤って身に着けていたベールを落としてしまいます。

ライオンはティスペの落としたベールを爪や牙でズタズタに切り裂いてしまいます。
ライオンが立ち去った後、待ち合わせ場所に着いたピュラモスは、
ズタズタに切り裂かれた血の付いたベールを見て、ティスペがライオンに襲われ食べられてしまったと思い込みます。

悲しみに我を失ったピュラモスは「お前が死んでしまったなら、俺も死のう」と自ら剣で首を切り裂き死んでしまいます。

しばらくして、ライオンから逃れたティスペは再び待ち合わせの場所に戻りました。
するとそこには、変わり果てた姿のピュラモスが横たわっていたのです。

ティスペはピュラモスを抱きしめ、自分が落としたベールが彼を死に追い込んだと悟ります。ティスペは「あなたが死ぬなら、私も死にます」とピュラモスの剣で自らの胸を突き刺し、
命をたちました。

朝になり、2人の亡骸は2人の両親によって発見されました。
共に2人の死を深く悲しんだ両親は和解し、2人を同じ墓に埋葬しました。
花言葉の「ともに死のう」はこんな2人の悲しい物語が起源となっています。
また、白い桑の実はこの時にピュラモスとティスペが流した血によって赤く染まってしまったという伝説も言い伝わっています。

おわりに

どの花にも意外なエピソードが隠れていたことがお分かりになっていただけたでしょうか?毒々しい花も、可愛らしい花も色々なエピソードを知ったうえで見ると、少し見方が変わるかもしれませんね。
他にも花ごとに色々なエピソードがある花言葉。
これから花を贈る時には花言葉とそのエピソードに注目して贈るのはいかがでしょうか?